6.29.2013

戦略なきエコノミックアニマル

 成長戦略とか骨太方針とか言う言葉を四半世紀近くも言い続けてる政治家達の迷走ぶりを見るにつけ、この国には国家観・世界観を持った思想が欠落していると考えさせられる。
 ただ、政治家は国民を映す鏡でもあるわけで、拝金主義・自己中心主義が蔓延している世相を見れば民主主義”風”システムを持つ国としては仕方ないことなのかもしれない。まさにエコノミックアニマル。
 
日本という国の戦略なき宇宙開発
 日本における宇宙開発政策は、宇宙基本法に基づいて2008年に設置された内閣府宇宙戦略本部が中心になって進めることになっている。それまで省庁毎にバラバラで戦略どころかまともな宇宙開発計画を持たなかった日本においては、戦略的に進めようという発想が出てきただけでも一歩前進ではあったけれど、企画立案を行なう宇宙戦略室とその審議を行なう宇宙政策委員会が設置されるまで約4年を要するという役所仕事で現在に至っている。
 宇宙政策委員会のメンバーは以下の通り。

  委員長 葛西 敬之 氏  東海旅客鉄道株式会社代表取締役会長
  委員長代理 松井 孝典 氏 千葉工業大学惑星探査研究センター所長
  委員 青木 節子 氏  慶応大学総合政策学部総合政策学科教授
 中須賀 真一 氏  東京大学大学院工学系研究科教授
 松本 紘 氏  京都大学総長
 山川 宏 氏  京都大学生存圏研究所航行システム工学分野教授
 山崎 直子 氏  宇宙飛行士

 先月までで15回開催されている宇宙政策委員会ですが、これまでの審議内容を見ると残念感が満載。そもそも昨年の開始時点で最初に出された資料が、財政が厳しいから基本的に実用的なもの中心でやるからねって内容。将来的な戦略も未来像も何も描こうとしていない。

 2012年8月15日付け発表資料
  平成25年度宇宙開発利用に関する経費の見積りの方針(PDF)

 経費の話しからかよ!って感じだけど、この方針だけは明確で計画を立てていくにあたってはある程度の取り組み範囲を限定してしまった上で「従来の技術開発に重きを置いた施策から、利用を重視し、出口戦略を明確にしたものへと改めなければならない」としている。夢も希望もない。

 新たな宇宙基本計画に盛り込むべき事項(PDF)

 これまでに開催されてきた宇宙政策委員会及び各調査部会の動向については、逐次みてきているけれど、”なぜ”,”何を目指して”宇宙開発を行なうのか、宇宙開発によって”何を実現するのか”、に関する軸となるマクロなビジョンが語られることなく、従来の延長線上にある個別のミクロな視点と短期的な経済的視点に終始している。大風呂敷を拡げるどころか、有人宇宙飛行ですらこの国では自前で実現出来る日が来ることはないだろう。
 国に任せていてはいつまでたっても地球の、この地上に張り付いたままなのだ。

宇宙開発先進国
 一方お隣の中国では、2020年に独自の宇宙ステーション完成を目指すという明確な目標を持って有人宇宙開発を着実に進めている。つい先日は神舟10号の打ち上げに成功し、宇宙飛行士が宇宙から子供たちへの授業を行っている。

http://www.space.com/21644-china-astronauts-science-lesson-shenzhou10.html?cmpid=514630

 宇宙授業自体はアメリカでも日本でも行われてはきたけれど、しっかりと戦略を持った宇宙開発を進めている中で自力で実現している事実はすごいと思う。旧ソ連の技術をコピーしただけだと言う意見もあるが、それは負け犬の遠吠えでしかない。
 国家体制として問題があるとはいえ、中国が持つ前に進むチカラは凄まじい。(共産党体制の腐敗とかいろいろあるけれど)厳しい競争の中で努力に努力を重ねた多くの人達がビジョンを創り共有して宇宙を目指し、そこで得られるものを次の世代に繋げようとしている。公称13億の人々を前に進ませる大きな意思のチカラがそこにはある。そして個々人の強烈なチカラがある。

 明治維新を成し遂げ、西洋列強に追いつけ追い越せと邁進して、バブルに至るまで慢心したエコノミックアニマルは結局自分を見失ったまま四半世紀近くを無為に過ごしてしまっている。
 謙虚に自らを見つめ、時に大風呂敷を時間軸方向にも拡げる視野と思考がそろそろ必要だ。

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